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  • 執筆者の写真halfmoonjourney 小川

思い出。僕がデザイナーになった経緯3。

ちょっと時間が空きましたが前回の続きです。


最初は順調でカメラマンの腕に感動してた前半

専門学校時代の卒業制作で「カメラマンと組んでみたい」との思いからフォトグラファー科の人に撮影を頼んでいざ当日。本番です。事前に小物の準備からモデル役の人の手配、入念な事前打ち合わせと思いつく限りの準備を済ませ撮影に臨みました。段取りは前半に背景となる物撮りをして、後半で人物撮影、後日データをもらって背景と人物を合成してポスターにするという手はずでした。フォトグラファー科のカメラマンも当時の僕から見たら立派なプロで、光の位置を気にして光源をいくつも準備してくれていました。撮影はやや難しい部類であったとは思うものの、撮影しながら合わせていって、途中まではとても満足のいく物でした。


ところが事件は人物撮影の終盤に起こります。人物を撮影してる最中に学校の先生が入ってきて「もう時間なので撮影は終わりです。」と言い出します。撮影したことがある方ならわかると思うのですが、必要カット数を残して撮影が終わるなんてまず有り得ないです。撮影って必要カット数を全て撮るのが前提でやるし、大規模撮影の場合必要なカットを撮れずに終わるなんて責任問題でしょう。いくら専門学校の撮影と言えど、そんな無茶苦茶通るわけがない。しかも同じ職業であるカメラマンの先生が「終わりです」と言ってる訳ですから余計にあり得ない。


「この人何言ってるんだろう?」と思って現場責任者でもある僕が話を聞いたところ、学校のスタジオは夕方6時までしか使えないルールらしいとのことでした。ただ、この事で僕の気持ちは余計にヒートアップするのでした…。今回撮影許可を取ったのも僕だったのですが、6時までしか使えないなんて話一言も聞いてない。というか聞いてたらちゃんとスケジュール組んで巻いてたわ!と思って、こっちは真剣にやってるのになんて適当な人なんだろうと怒りが湧いてきます。そこで僕も覚悟を決めて「そんなの聞いてないですよ。」と食ってかかることにしました。そうやって揉めて5〜10分経っても向こうは全然折れる気がない。そして僕も今日撮影が終わらないと卒業制作ができないので卒業できない(笑)そんなピンチの中で僕はひとつの姑息な作戦を立てるのでした…。


立案

先生達と揉めて交渉というかただの文句の応酬になり始めた頃、僕は頭の中で考え始めます。残りの必要カット数を撮るのに最短の時間で30分くらいでいけるのではないか。しかしながら許可を取ろうにも全く交渉に応じる気配のない先生達に了承をもらうのはまず無理。でも僕も決して折れることはできない。というか撮影時間の伝達をしていなかったという落ち度をなんで学生側が取らされるのか納得できないので、ここで止めるのも論外。(先生方がここで「我々教師側でミスがあった、すいません」と言えたのなら別でしたが…。)ということで諸々の思案が一巡した頃に一つの作戦を思い付きます。「あとここで俺が30分揉めたらいいんだ」と。


先生達と揉めながらも僕は一人で交渉してたので、撮影そのものは続いてました(隣で怒号が飛んでる中ですが(笑))。ということは、ここで僕が揉め続けたら撮影時間が伸びる。そしてあと30分で終わるのなら頑張っちゃえ!という姑息な作戦を思い付きます。そしてそれが今1番の良案だと確信した頃、先生に言い放ちます。「話はわかりました。ちょっとみんなに話してくるので時間をください。」


そして実行

カメラマンの元に戻ってすぐに指示を出します。「巻きで撮影してください。僕が揉めて時間を作るので。30分くらいで完了して欲しい。」と。そして全体のコンセンサスが取れて現場をカメラマンに任せた頃、僕は先生達の元に戻って言います。「やっぱり納得できない。」と(笑)


そんな感じで第2ラウンド開始。交渉・話し合いという名の文句の応酬を30分ほど粘って続けます(笑)僕は30分口喧嘩を続ける役割なので、お互いトーンダウンしそうになったら再度盛り上げるという謎の役割を遂行し30分持たせることに成功します。無事カットを取り終えた合図を確認し、その瞬間「わかりましたよ、じゃあ今日は諦めます。」とそそくさと言い、波乱の撮影は終わるのでした。


撮れ高自体はさすがフォトグラファー科のカメラマン。とても良かったので問題なく背景と人物の合成も進み無事卒業制作が完成。立派な出来でクラスの中でもそんなに悪い出来ではなかった気がします。そんな感じなので無事卒業制作も認められ晴れて卒業することができたのでした。


フォロー

ちなみに撮影の日はあれだけ先生と揉めたので、僕は停学処分も有り得るのではないかと予想していました。なので先生達との交渉は他の学生を巻き込まないように、僕一人で向かったのですが結局お咎めなしでした。撮影後日、担任でもあったアートディレクターの先生に「フォトグラファー科の人達にお願いした撮影でこんな事があって、何かご迷惑をおかけしたら申し訳ありません。」とお伝えしたのですが先生は「大丈夫だよ」と一言で終わったのを思い出します。当時そのアートディレクターの先生は学校の中でも実力派のデザイナーでもあったので、当日揉めたカメラマンの先生が不満に思っていてもアートディレクターには文句を言いづらかったのかもしれません。もしかしたら発注側と受注側のパワーバランスが効いたのかもしれませんね…。

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